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蔵 |
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つばさに乗って1時間、僕は山形駅に立っていた。 そこがおばあちゃんの家の最寄りの駅だ。実は、おばあちゃんの家は「蔵」と言う苗字で、昔から続く大地主ということだった。 一番通りがいいということで苗字が其のまま地名になってしまった、と言う話を小さい頃に叔母さんに教わった。 じりじり陽炎の立つ道を畑沿いに歩いて10分弱、大きな藁葺きの母屋が見えてきた。僕が言うのも何だが立派な蔵があって、それが 当家の自慢である。なんでも重要文化財とか何とか言う候補にもなったと、酔っ払った叔父さんが言っていた。 子供の頃に、蔵の中で遊んでいたら叱られた事があった。僕が蔵の中の壷を壊したからだったのだが。その後、倉の中にはいれてもらえなくなってしまった。 母屋の大玄関の前に、腰の曲がってしまった、けれどもやさしいおばあちゃんがもんぺ姿で立っていた。 「よくきたなや」 まあ中に入れ、と促され、今年も僕は蔵家に来た。農家の作りであるせいか、木の匂いが漂うひんやりと涼しいこの造りが 僕は大好きだった。この家に住んでいるのは叔父、叔母夫婦、おばあちゃん、それと叔母夫婦の子ども3人。 お手伝いさんが5人、合わせて12人だった。 そう言えば、僕と同い年の双子がいた。女の子と男の子で、幼い頃は良く遊んだもんだったが・・・・ 「あー! たっちゃん来てる!」
続いて、「たっつんか。」と言う、飄々とした男の声がした。双子の男の方で、良男という名前だ。
漫才コンビのような名前だが、男の方は落ち着いていて年上のような感じだった。母屋の座敷に座り、もてなしを受けていると、良子が網と籠を持ってきていった。
もうすっかり日が暮れ、肌寒くなってきたころに僕たちは誰が言うともなく帰った。お腹がペコペコで、出されたものは全部平らげ、おかわりもした。おばあちゃんや叔母は「男の子はたべっぷりがいいねえ」と言って、うれしそうだった。
* * *
夕涼みに、敷地内を散歩していると、蔵のある所に出た。社会で習ったような造りだった。何だっけか。蔵の門は、いつも南京条がかけられている。しかし、僕は目を丸くした。 今日に限って鍵が無い。 どころか、うっすらと開いてさえいるのだ。 僕ははやる気持ちを押さえ、そうっと門を押し広げた。
キィィィィー・・・
真っ暗だった。地面は漆喰で塗り固められ、白く浮かんで見えた。カビのすえた匂いがした。木の古い匂いも。ひんやりとしていて、まるで怪談みたいだと思った。しかし、月明かりが格子の窓から入って神秘的な相様をかもし出した。
カタン
僕は飛び上がった。 くすくすくすくす・・・ 誰かが、僕の前に立っていた。 くすくすくす・・ 髪を後ろで結わき、黒い浴衣を崩れた着方をした小さな女の子だ。 うふふ。 白い細い腕を僕の首にかけ、細面の白い顔がゆっくりとちかづいてくる。微かに膨らんだ胸が黒い浴衣からちらりと見えた。赤い唇がてらてらと光り、同じように赤い舌が僕のみみたぶを−・・・ 「うわアッッ!!」 僕は必死で突き放した。普段なら鼻の下を伸ばしてもいいかもしれないがあの女の子は・・ヤバイ! 僕の直感がそう語っていた。 僕はそのまま、蔵から飛び出した。
・・・誰もいない。ばかな。
その夜は寝つけなかった。
* * *
朝だ。 蔵の前に立つと、叔父とはちあった。 僕はギョッとした。いつも陽気で太った叔父が、やつれて見えた。「たつ坊か・・。」と言って、ふらふらと蔵の中へ入っていった。僕はとても蔵の中に入る事は出来なかった。何かあるんだ。
きゃはははははは
叔父のものとは到底思えない甲高い笑い声が 聞こえてきた。
あはははははははは
狂ってる!!! 叔父が少女の黒い着物をほどき、少女はか細く白い腕を叔父の背中にまわしていた。叔父の青白い手が少女の白く細い足をつたう。叔父は苦しそうな青白い顔をしているのに少女は妖しく愉快そうに笑う。 僕は逃げた。
きゃはははは
少女の笑い声は僕を追いかけてくる。
きゃはははははははははははは
何処までも、追いかけてくる。 あの、赤い唇とてらてら光る赤い舌が、
きゃははははははははははははははははははは
僕は目を覚ました。 怖かった。 ドアが開いた。 僕は・・・鳥肌をたてた。
くす。
「・・・・母さん?」
ENDLESS |
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投稿作品第一弾〜〜!! 古い家の中には、足を踏み入れてはいけない場所があるものです。 ねこぞう、自分が田舎の出身なので祖母の家とか思い出して 彩さん、すてきな恐怖をどうもありがとうございました! 3/29 ねこぞう |
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