9/10
スタジオでは、どういうわけか昔からゲームは盛んらしい。ボードゲーム、パーティゲーム、テレビゲーム、などなど。ねこぞうが入った直後にもさっそく「新人いびり」
のように数人でゲーム盤を囲まされた。そこで初めて知ったのだがこれは本当に面白い。この日は、そんなゲームの一つを珍しい方々とプレイすることができた。
メンバーはスタジオエトセトラが装丁を請け負った「メタファー」の制作メンバー(作者、編集者等)の総勢七名。プレイしたのは「パニック」というパーティゲームだ。カードの山の中から一枚を引き、そこに書かれたものから次の人に問題をひとつ選んで出す。「ケーキの種類」とか「アニメ番組」など。出された側は、約一分の時間でそれに答えを三つ言わねばならない。もちろん時間は早ければ早いほど得点が高い。二回目以降は答えが四つ、五つと増えていく。アニメ番組三つは思いついても、コチコチ進むストップウォッチと周囲の目というプレッシャーで、なかなか四つ、五つが言えるものではない。
面白いことにこれはなかなか性格とか知識の範囲が出てくる。
あのひとはよく勇んでこけるとか、あのひとは意外にプレッシャーに弱いとか。
当日来ていたブン太くんなども、アニメ番組は「サザエさん」や「ドラえもん」しか出てこないし、トレンディドラマは「101回目のプロポーズ」まで遡っていた。興味の範囲がまるで違うのがよく分かる。
ねこぞうの場合、マズッたと思ったのはこの問題が出たときだ。
「通学カバンの中身」
とりあえず元気よく、「まんが!!」と答えてしまった。
※ちなみに当日のメンバーの中には、ねこの恩師たるT先生が含まれていたことを明記しておきたい。
9/11
既に週刊化のような気さえしてくるここ、PSYCHOCATS。開設以来そろそろ一周年……という時期に存続を危ぶまれそうなその矢先、なんとMobs
& Co. が休止となってしまった。新作に取りかかり、ワンパラの更新も滞っていたためいっそ専念するとのことである。これも潔くて良いかもしれない。スタジオ周りでまだまだ元気に続いているのは、宮さんのChange
by Gradation、セブンの寿少年、大ちゃんの下関見聞録などだ。こうなるとうちはどうも肩身が狭い。閉鎖するでもなく、さりとて休止期間を設けるまでいかず、更新も今日するか明日するかと思っている内に十日が過ぎる。なんだかまだなんとなく好きなのだけれど関係がマンネリ化してきて、このままずるずる結婚してしまうよりいっそ別れようかと悩む二十代後半のちょっといいかげんな男みたいな心境である。(そしてもちろん二十分ぐらい悩んだ後、即忘れてラーメン食いに行ったりする)
ちなみにとっくに冷却化しているにも関わらず、うっかり籍だけ入れてしまったために別れるわけにいかなくなってるようなページも、どことは言わないがけっこうありそうだ。実にしょっぱい話だと思う。
それでも、ねこぞうとしては一年間、休み休みどうにかやってきたというのは奇跡に等しいことだ。思えば日記が一日以上続いたことがないこの身である。三日坊主すら遠い夢であった学生時代。それを思えば、ちょっとはよくやってるのかもしれない。
そんな気分で、今日こそはと決意してパソコンに向かった。この決意が毎日続けば、きっともう少し関係も活性化するはずなのだがどうだろう?
ともかく季節はもう秋である。
9/13
長いものは好きではない。主に食用について。
個人的にあまり食べ物ではないと思う。例えばうどんやそば、そうめんなど。パスタ もその中に加えよう。どれも好きではない。だってこれらの持つ大きな特徴は「長
い」だけではないか。長さだけがこれらの食品のアイデンティティーを維持している。これはもはや食品ではない。
ラーメンはまぁ、いい。冷やし中華も。焼きそばやすき焼きの中に入ったうどんも、構わない。こっちは「長い」だけではない。具であったり、スープであったり、味付
けであったり、何かいろんな特徴がある。ただ単純に長くはない。これらの長さには意味があるような気さえする。
だがうどんとか、そばとか、そうめんはどうだろう。いいダシを使っていようが、 ちょっと具が乗っていようが、何よりもまず「長い」ことが目立つ。「意味のある長
さ」ではなく、「長さに意味」を持たせた食べ物である。気に入らない。
「うなぎ」や「あなご」みたいに、自ら長いことを放棄した食べ物は好きだ。大体切り開かれたりして、長さを感じさせずに登場する。味が優先され、そのために長さは捨てられる。いいことだ。
なんでかなとは自分なりに考えてみた。周りの人でも、うどんやそばを嫌う人はあまりいない。だとしたらこの嗜好はなんだろう。前世で長いものに巻かれて死んだりしたのだろうか。
しかしなんとなく分かる気がする。「あるがままの姿」というのがねこは許せないのだ。ごく自然に、長いままそこにある。それが否定されることなどあり得ないかのように。生まれてこの方、ほんの小さなささくれのひとつもなく育ってきたかのように。
だからせめてちょっとぐらい、嫌われる必要があるのじゃないかと思うのだ。
9/26
夜の電話が告げることは、大抵ロクなものでない。
虫の知らせというかなんというか、今日だって嫌な予感がしたのだ。 ねこぞうは家の電話はほとんど使っていない。PHSの方がずっと便利で捕まりやすいから、みんなこっちにかけてくる。もちろん自分がかけるときも、電話を持ったまま
動けるようにPHSを使う(部屋が狭いため子機の必要がなかった)。会社に持って行くから、これは大体着信があっても音が出ないバイブモードになっている。鳴ってても気付かないときも多い。特に夜、家でいるときは。
それなのに、入れっぱなしにした鞄の中で、虫の声みたいな音がするのが聞こえた。
ブゥゥ―――――――ン
テレビの音、パソコンの音、外の車の音。 いろいろ考えたけど電話しかない。気が付いてしまったら仕方がないのでとりあえず 鞄を引っかき回して探し出す。
「チャクシンアリ」。 相手先の番号は表示されない。不穏な空気が流れた。
「もしもし……」
「あ――っやっと出たわねどうなのそっちはこっちはもうたいへんよ昨日まで中学校が試験でホントつかれたつかれたーこれからごはん食べに行くのよもちろんシンちゃんもいっしょ、それで10月なんだけどね1日にそっちいこうとおもうのなんでってネ
イルよネイルが解散したの知ってた?そのライブが8月にあったんだけど行けなかっ たじゃないシンちゃんそれで新しくできたバンドがねその日にライブやるのよもう絶対行くってはりきっちゃってあの子もちろんお母さんもねまだチケット取ってないんだけどなんなら当日券でも入れるかなってだってマイナーだしマイナーあータノシミだわー」
( 出るんじゃなかった……)
ねこの後悔をよそに、電話の向こうの母の声は三十分ほど続いた。