11/14
腐った寿司ともぎたての柿。
文学的表現ではない。今現在目の前にあるものである。これらは婉曲的な意味で、非常に季節感を意識させるものだ。秋、いやもう冬かと思われる冷え込む季節、十一月。ここ数年、この時期にはたいてい上記の二つを目にすることになる。大抵同時に。
パーティーパックの小僧寿司は大勢の客にあてがうために購入されたもの、大小様々の柿はスタジオの庭で取れたものだ。
一部の人にはもうお分かりだろう――ゼミ雑誌・Panic Americanaの季節である。
今年で五回目を数えるこの雑誌。本来なら学部生から原稿を集め、細々と身内だけで楽しむコピー誌であったはずなのだが、何かの拍子に異様に大がかりな冊子形態になってしまい、もはやゼミ雑誌の範疇にさえ留まらなくなってしまったものである。学部生、大学院生のみならず先生がどういうつながりでか集めてきた評論家の方々からも原稿を頂いたりしてしまい、もはや「原稿料の出ないユリイカ」の如きPanic
Americana。それはいい。雑誌自体の質が向上するのはありがたいことだし、原稿を頂けるのも嬉しいことだ。ただこの場合、問題なのは何か。
編集人員の不足である。
例年、学年で二名程度が選出され加えて有志の協力をつのり編集者がまかなわれるのだが、正直このやり方がうまくいった試しはない。たいてい二名の内、やる気があるのは片方だけで、それがもう一人ぐらい親しい学生を巻き込んで編集に携わることになる。作業の場所も問題だ。機材が揃っていて、みんなが集まれるような場所。学校の近くにはない、誰の家にもない。結局スタジオになる。またパソコンを使った編集など誰もやったこともないから、アプリケーションの使い方も教える人材が必要となり――結局、例年この時期になるとスタジオが満員になるという有様である。
ねこぞお自身はもう実際の作業とは便宜上おさらばではあるが、それでも机の上の腐った寿司ともぎたての柿、そして隅のソファで丸々女子学生とパソコンの前に多分昨日の夜からずっといる男子学生などを目にすると季節を感じずにはいられない。また一年が過ぎたこと、今自分がいる位置、奇妙にずれた、学生でもなく社会人でもない感覚。
机の上の寿司と柿を観るたび、そんなことを物思う。
11/18
11月だというのに、早くもクリスマスムードが漂ってきている。高島屋のタイムズスクエアを歩いても、サンタやトナカイのイルミネーションが盛んに季節をアピールしてきて、悪くはないが何となく押しつけがましいものを感じる。別にクリスマスは好きだし、盛り上がるムードも嫌いではない。カップルが増えるのも害はないし、居酒屋の予約が埋まるのもいい。ただ、ほのぼのした家族クリスマスだけはどうにもコンプレックスを刺激されるので、頂けない。これは完全に個人的な事情であって、私情に流された考え方だとも思うがどうしても本能の部分で拒絶したいらしいので捨て置いている。
元来うちの家、はるか徳島の片田舎にある「ねこぞお邸(仮)」は、行事に縁遠い家であった。クリスマスだからといって何があるわけもなし、お盆や正月でも家族全員揃うことは滅多になく(大抵不在なのは父)、個人の誕生日は忘れられる始末。ケーキの一台ぐらいは買ってきてはいたが、それもたまたま店の前を通って思い出したからとかいうので、家族揃ってお祝い事をするといってもどこから始めたらいいのか分からなかったらしい。そんなわけで、各自がそれぞれ自分なりのクリスマスを演出するようになっていた。
ねこぞおの場合はこうである。クリスマスが近くなると、読みたい本を買っても読まずにとっておき、その日に取りだして読む。ココアとこたつのオプション付きである。文庫本もいいが、ここはやはり奮発して買った単行本、それも待ち望んでいた作家の新刊なんかなら最高だ。それでなければ、何度も読んだお気に入りの一冊を取り出し、最初から最後までもう一度通読する。静かで幸せな時間。過剰に過ぎる楽しみは終わった後に寂しさが残るし、あんまり惨めな気分になるような過ごし方もよろしくない。いちばん幸せだというときでさえ、満たされているが為に何か埋めようのない孤独感みたいなものを一層感じてしまう。これぐらいが一番いいのかもしれない。一冊の本。あたたかい紅茶。クリスマスの夜。
これを読んでいる、あなたのクリスマスはどうですか?
11/20
スタジオの床に珍しい物が置いてあった。いや珍しい、というより懐かしい、と言った方がいいだろうか。
復刻版「ハイスクール奇面組」。実に十五年の歳月を経て――その間「ボクはしたたか君」など小ネタの連載もあったが――復活したこの漫画。「三年奇面組」に続くこのシリーズをねこぞうは現役で読んでいた。当時の連載陣は「キン肉マン」に「北斗の拳」、加えて「魔少年ビーティー」……はともかくとして、実に豪華なものであった。今ではすっかり青年誌に定着した本宮ひろし作品などもこの頃ジャンプ黄金期の一角を担っていたと記憶にある。
そんな華やいだ時期を支えた漫画が、今十数年の時を経て続々と復活して来つつある。この「奇面組」もそうだが、「リングにかけろ」や「キン肉マン」はそれに先駆けてそれぞれの息子を主人公として生まれ変わっている。しかし。
どうもこの床の上の「ハイスクール奇面組」はそれらとは違う種類の懐かしさを感じる気がするのはどうしてだろう。何かつい最近見た気がする、大写しになった一堂零の顔。懐かしさか、それとも一種の既視感か。はたまた……。
そこへ帰ってきたスタジオの代表。やっと納得がいった。
床の上の雑誌の顔は、向山貴彦(30)にどことなく似ていたのだった。
11/23
鼻持ちならない風情の町へ、映画を観に行く。前売り券から準備していたウィノナ・ライダー主演の、邦題「17歳のカルテ」。原作を以前読んでいたこともあって、だいぶ前から楽しみしていた一本である。
境界性人格障害という心の病に悩む少女が入院先の病棟で送る一年間を描いた作品で、感想はいろいろだろうけど個人的にはとても面白かった――というより、珍しく感じ入った。自分の心が自分でも分からない、何か制御不可能なものに振り回される気持ちや周囲との隔絶感。誰にでも覚えがあるものなのかどうか分からないが、ねこぞう的には馴染み深い。
何がきっかけで、感情が動くのかさっぱり分からない。空気、時間、ひとの存在、音の大きさ、情報の量。引き金になるものはたくさんある。ただ分かるのは、その何かが引き金を引くと、自分がうまく動かせなくなる。そうなった時の主な症状としては、まず行動が非常にぎこちなくなる。極端に言葉が少なくなり、ひとと目を合わせないなど、端から見たらけっこう不自然そうだ。それは分かっているが、どう振る舞えば自然なのか、いつもなら何気なくできていることができない。「普通」がなんだったのかを完全に見失っている。一時的なものだし、軽いものなら数時間で過ぎるがその間の不安感は一体なんなのか自分でもよく分からない。
しかし以前はもっとひどい時もあった。例えるなら頭のうしろにブラックホールがあって、うっかり飲み込まれてしまったような感じだろうか。体の中から自分が消え、すでに生きていない感じ。死んでいるはずなのに、肉体だけが動いている不自然な感覚。自分はからっぽだ、とそれだけを認識しているが他に何も感じない。鬱々とした日がしばらく続く。その間、「自分」の方は暗い所でさんざん咀嚼されるが、すっかり噛み砕かれた後、その破片がまた身体に戻ってきて普通に戻る。始まってから、おおむね二週間程度で帰ってくることが可能だ。これが異常なのか病気なのかよく分からないが、とりあえずその間でも学校など公の場所では公の顔を維持できていたので、まあよしとしていた。そんなもんだろうと思う。
そんなわけで、作品としてもよくできていたのはもちろん、映画の方は十分楽しめたのだが一緒に行った女友達はこう言っていた。
「なんかちょっとダルかったかも〜」。
あ、「普通」ってこうなんだ、とその時気が付いた。
12/7
忘年会の季節である。先日はゼミのOB会があったし、会社でも日程の都合を聞かれることが増えた。何といっても無礼講。誰に関しても、普段とは違う顔が見える。歌い出す人がいたり、何かと笑わせてくれる人がいたり。
しかしこの季節、思い出すのはやはり寒さだ。それも肌を通じて感じる気温の低さや、クリスマスを一人で過ごす寒さなどではない。純粋にすうっと引く感じ、痛々しくて見ていられない感じ。そういう種類である。
早い話が「巨峰サワー」と「巨乳サワー」をかけるような寒さに、たびたび遭遇するというわけだ。
ともすればおじさまの代名詞でもあるオヤジギャグ。果たして本人が面白いと思っているかどうかも疑わしい程度の微々たる娯楽性。「君たち飲み物は何にする?」「私、巨峰サワー」「そうか……じゃあ、おじさんは『巨乳サワー』!! なんてなっっ!!」
これ笑いと取るかどうか、それ以前に意志疎通が成立しているか、かなりぎりぎりの線だと思う。全く嘆かわしい。
しかしもし自分が50代男性の立場であって、20歳そこそこの女子社員と飲まねばならないことになったら――どうしても今その場で、何か面白いことを言って盛り上げねばならないとしたら――自分は何と言うだろうか。
「飲み物何にする?」「私、巨峰サワー」。
この会話に続けて笑いを取るとしたら!
これだ!!(がばっと足を広げて)
「おっちゃんの股間も巨砲サワ〜!!!」
※さがさないでください ねこぞう
12/20
〜向山貴彦個人サイト「Mobs & Co.」リニューアルのお知らせ〜
数ヶ月間更新を停止していたMobs & Co.が帰ってきました!
遙かに増えたイラスト、企画の山はさながらおもちゃ箱のよう。
でも、他のサイトとどこがちがうの? そうお思いのあなたに、PSYCHOCATSが分かりやすく御説明致します!
Mobs & Co.:こんな所がすばらしい!
〜他のサイトと比べてみると〜
1. とにかくカラフル!
他のサイト:印刷物とは違い、制限の少ない色数がネットの強味。にも関わらず、 あれれ、ほとんど二色刷り?
Mobs & Co.:画面一杯に広がるフルカラーの世界! 明るく、かわいらしく、かつ華やかです!
2.30種類を超えるキャラクターイラスト!
他のサイト :このイラスト、前にも見たことある! これって顔の向きを反転させ ただけ?
Mobs & Co.:細部にも手を抜かない作者がひとつひとつ愛情を込めて描いています。
3. 企画も充実
他のサイト :企画モノはあるけど、自分から参加できるゲームってないよねえ。
Mobs & Co.:知識と発想を駆使したCGIのゲームが盛りだくさん!
4.更新が早い!
他のサイト :週に一回もチェックすれば十分!
Mobs & Co.:日々のワンパラコーナーがあり毎日退屈させません!
※他のサイトの例: ここ。
さあ、これでMobs & Co.がいかに素晴らしいサイトとして生まれ変わったか、お分かり頂けたでしょうか?
楽しそう!行ってみたい!そう思われた方は下記のアドレスを、レッツクリック 〜!!
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