2006年08月13日
くらいよるのゆめ
時々、子供の頃の夢を見ます。たいてい、母と姉が出てきます。
私はまだ小学生ぐらいで、買い物に行く二人の後をついて歩いています。デパートや美術館。おしゃれなカフェに、バーゲンセール。二人とも、そういったきれいなものを見たり買ったりするのが大好きです。でも私は、そのどれにもあまり興味が持てなくて、ただ置いて行かれないようにと、そればっかり考えて歩いています。
よく気分が悪くなりました。吐き気がして、お腹がぎゅうっと締め付けられるような感じがしました。それでも、何も言わずに二人の後を付いていきました。これ以上、距離が開いてしまわないようにと、そればっかり考えていました。
一度だけ、足を止めてみたことがあります。小さなカバン屋さんの前でした。ワゴンに下がっている、ネコの絵が付いたショルダーバッグがかわいくて、ほんの少し眺めていました。そして顔を上げると、二人の姿は見えなくなっていました。近くにいたおばさんが、泣きそうな私に気付いて、母と姉を探してくれました。二人とも、遠くへは行ってなかったので、すぐに見つかりました。そして私がいなくなっていたことにも、気付いてはいませんでした。
私はその後もずっと、二人の後をついて歩きました。足を止めたら、本当に置いて行かれてしまう。そんな恐怖に、長い間取り憑かれていました。大人になって、別の町に暮らし始めて、自分の道を探し始めるまでは。
今にして思えば、二人の道は、私の歩きたい道とはちがっていたのです。親子でも家族でも、人は決して同じではありません。でも一緒に生活をしていれば、そんな錯覚を抱いてしまうことも否めません。母の選んだ道には、花が咲いているのかも知れません。姉の選んだ道には、果実がなっているかも知れません。私はどちらの道も選べないけれど、それでも二人が楽しく歩いていけるなら、それでいいと思います。たまに手を振ったら、向こうも振り返してくれる。その程度で十分です。
それでも、時々夢は見ます。華やかなデパートを、ちょこちょこと覚束ない足取りで歩いて行く私。ワンピースの品定めをしながら、美術展の時間を気にしている母。考えても、理解しても、納得しても、埋めることのできない幼い頃の気持ち。
置いていかないで。忘れないで。だって私には、他に何もないの。
伝わらない言葉、暗い夜。私はまだ、夢の中を歩いています。
投稿者 nekozo : 2006年08月13日 03:37