また馬車がやって来る。
 ひづめの音が表通りを近づいてきて、消えていく。何も聞こえないはずのルルの耳にも、その音だけはなぜかはっきりと聞こえてきた。
 ――あの馬車だ。
 かび臭いベッドの中でゆっくりと目を開ける。
 去っていったはずのひづめの音がまた戻ってきた。あの馬車が、あの子を連れていった。
 
遠ざかる馬車の音に耳をすませているうちに、
ルルの意識は遠い過去へと流れていった。