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2005年06月17日

ちょっと変わった映画のジャンル

話が二重三重に入り組んでいて、「夢の夢はまた夢」みたいなストーリーの映画を観たことはありませんか?
いくら考えてもラストまでどうなるのかさっぱり分からず、およそ一番最後の最後になって、当然だと思っていた世界観が根底からくつがえされるというどんでん返しが用意されている……そんな映画。「実は執事が犯人」とか、そういう小さなどんでん返しではなく、「自分が常識だと思っていたことがそうではなかった」というようなスケールでストーリー全部を一瞬にして覆してしまう映画のことです。

こういった映画のジャンルを、英語では「マインド・ファック(mind fuck)映画」と呼んでいます。
二つ目の単語の方を観れば、これが上品な呼び名でないのは一目瞭然ですが、この表現はなんとなくすごく言い得ていて妙だと男うので、個人的にすごく気に入っています。
知っている方も多いと思いますが、もともと「fuck」は男の子が中学校ぐらいになるとどうしようもなく興味を持って、朝から晩までそのことしか考えられない行為を指す単語なのですが、何十年も好まれて使われるうち、単語の意味そのものがぼやけてしまって、今では「fuckする」というのは「めちゃくちゃにする」という意味の方が圧倒的に強くなっています。「怒り」や「ヤケクソ感」を表すのに大変便利な単語で、文章のどこにでも、何度でも入れられるので、柄の悪いアメリカの人なんかだと、怒ってる時は全文節の頭に入れちゃう人もいます。

このことから分かるように、mind fuck映画とは、観ているうちに観客の頭の中をぐちゃぐちゃにしてしまうような映画のことです。

「世界全部がひっくり返るオチ」といえば、近年ではシックスセンスがすぐに浮かぶ人も多いと思いますが、あれは厳密にはmind fuck映画とは言えません。「びっくりするオチがついたスリラー」、という方が正しいと思います。真のmind fuck映画とは、観ているうちに「もう勘弁してくれー!」となるようなもので、よくできた作品はまるで白昼夢のようなイメージで脳に焼き付いてきます。だから精神的に弱ってる時や、自律神経失調の人にはおすすめできませんが、二時間の間、頭をぐちゃぐちゃにシャッフルされたい人や、ややこしいミステリーがたまらなく好き!という人には大おすすめのジャンルです。

とりあえず今までのぼくが観た「面白い!」と思うmind fuck映画をリストアップしておきましたので、興味のある方がいたら、ぜひレンタルしてみてください。悪い夢が見られますよ。

【ジェイコブス・ラダー】
ベトナム帰還兵の主人公が国に戻ったあと、町中で奇妙な出来事や、恐ろしい悪夢に遭遇する。戦場で使った化学兵器の副作用によるもののようだったが……。とにかく気持ち悪いのに美しく、幻想的なシーンが何度も登場して、観客を主人公の悪夢の奥深くまで連れて行ってくれる映画。その果てに待ち受ける恐ろしい結末には、途中で多くの人が気がつくだろうが、それでも戦慄せずにはいられない。

【オープン・ユア・アイズ】
トムクルーズによって「バニラスカイ」としてリメイクされた映画のオリジナルがこれ。プレイボーイの主人公は、ある日、しつこくつきまとってくる女性と共に、自動車事故に巻き込まれる。目が覚めると、端正だった顔立ちは歪んだものに変わり、人生はめちゃくちゃになっていた。夢と現実の境界線が分からなくなる、浮遊間のある映画。「バニラスカイ」の出来も決して悪くはないが、あらゆる点でこのオリジナル版を強くすすめる。同監督の「アザーズ」も、形式的にはゴシックホラーだが、実はなかなかのmind fuck映画。

【アイデンティティ】
嵐の夜に辺境のモーテルに取り残された十人の人々……やがてひとりひとり、何ものかによって殺されていく。アガサクリスティーの「そして誰もいなくなった」のような話だが、オチは正に現代ならではの複雑などんでん返しに支えられていて、ただのミステリーだと思っていたら、力一杯足元を救われる。

【セッション9】
潰れた巨大精神病院の解体作業にかり出された主人公たちは、有毒のアスベスト材を連日はがしているうちに、だんだん意識が混濁していく。そして、やがて意味の分からない不思議なことが起こり始め、スタッフの一人が死体で発見される。実際に霊が出るという噂の廃病院で泊まり込みのロケを行い、キャストが精神薄弱になってしまった曰く付きのmind fuck映画。何しろセットではないので、バックの背景が異様な存在感を持って迫ってくる。脚本は正直ここで紹介しているほかの作品に比べると若干弱いが、雰囲気のためだけでも観る価値あり。

【ファイトクラブ】
ブラッドピット主演のアクション映画かと思ってみたら、さすがに「セブン」の監督だけあって、その正体はものすごくエキセントリックなmind fuck映画。脚本は多少強引に感じられるが、それを補ってあまりある完成度。このラインアップの中では、それでもまだまともな印象を受ける映画だと言えよう。

【フレイルティ】
主人公は男の子二人。ある日、突然神からの啓示を受けたという父親が、近所の普通の人を拉致してきて「悪魔だから殺す」と言い始める。明らかに正気を失っている父親だが、少年たちは逆らうことが出来ず、言われるがままに無実の人間の殺害に加担することになってしまう。加速していく狂気が行き着く果てが怖すぎる。ラストは若干やりすぎ感が否めないのが残念なところ。

【サイレントヒル2】
これは映画ではなくてゲームなのですが、あまりに良くできたmind fuckものなので、番外編として入れておきました。何年も前に死んだ妻から、突然届いた一通の手紙。そこにはかつて旅行に行ったサイレントヒルの町で「あなたを待っている」というメッセージが……。ハリウッドの最上質のシナリオにも負けない、緻密で衝撃的な脚本が秀逸なゲーム。あとにも先にも、ビデオゲームのラストで涙が止まらなかったのはこの作品だけです。

ほかにもたくさんあるのですが、紹介しきれないので、思い出せるだけ下に連ねておきます。現実が嫌になった時などの逃避場所にぜひご活用下さい。もしここに載っていないいいmind fuck映画を知っている方がいたら、ぜひ教えてください。お願いします!

【その他のmind fuck映画】
スパイダー
ドニー・ダーコ
エンゼルハート
メメント
バタフライ・エフェクト
ビデオドローム

投稿者 向山貴彦 : 2005年06月17日 23:15

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