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2005年04月08日

お〜い、お茶〜。

お茶業界も大変だ。
たぶん最初にサントリーや伊藤園がお茶を缶に詰めて大ヒットとばしていた頃には話も早かったのだろう。何しろまだお茶やウーロン茶の缶飲料なんて数種類しかないのだから、少々酸化していようが、添加物でにが酸っぱい味になっていようが、消費者も物珍しさで買っていたのだから。きっと今頃業界関係者は企画会議の時に「いい時代だったなあ」と、当時を懐かしんでいるに違いない。

今の販売部長 「あのころって商品名がずばり「お茶」とかでも売れたって本当ですか?」
あの頃の販売部長 「ああ。おれなんかうっかりウーロン茶の缶に間違えて緑茶入れたのに、誰も気がつきやしねえよ。」
今の販売部長 「いいなあ。今なんか新商品出すのに、まだ版権とられていない名前見つけるだけでも一苦労ですよ。」
あの頃の販売部長 「『茶髪』とかどうだ。今のギャルの髪型にひっかけて。」
今の販売部長 「残念ながらもう1996年にとられてます。」

確かに今の時代、きっとお茶担当は大変なのだろう。
ウーロン茶、緑茶、紅茶がひととおり全メーカーから発売されたあと、世の飲料会社は一時こぞって珍しいお茶の発掘にいそしんだ。そのため、町にはいつの間にか訳の分からないお茶が山のようにあふれかえる始末だった。ハトムギ茶、ほうじ茶、玄米茶などはあっという間に出尽くされ、あずき茶、ゴーヤ茶、ローズヒップティーと、まるで世界中をお茶辞典片手に飛び回る商品開発部の若手の姿が見えてくるようである。

(アフリカの奥地にて)
某飲料会社開発担当:「こちらで幻のお茶ワマキキ・ペペがあると聞いたのですが、独占販売権を確保したく、日本からやってきました。酋長さんはいらっしゃいますでしょうか?」
現地住民:「ホガラペ?」
某飲料会社開発担当:「ですから私、商品開発の渡辺というものでして、酋長さんの名前でぜひ商品を——あっ、なぜしばるんです! 違います。怪しいものじゃりません。ちょっと君! 君——!」

で、ひととおり「ワマキキ・ペペ」に至るまであらゆるお茶が出尽くすと、次は仕方ないので、まったく新しいお茶を作り出す方向が主流になった。といっても、所詮、ものはお茶である。どう改良しようとそんなに珍しいお茶などできようはずもない。第一、珍しい味だったら、誰もそれが「お茶」だと気がつかない。

そこで出てきた苦肉の策が「ブレンド茶」である。ダーツでランダムで選んだとしか思えないほどの数のお茶をごちゃまぜにして出すのが、各社の一時期の方針だった。だから十六茶やら二十茶がどんどん出てきて、しかもどれも入っているお茶の数を全部表記しないといけないので、原材料が京都のマニアックな喫茶店のメニューみたいになっていた。

どんな色もある程度以上に混ぜると黒になるのと同じ理屈で、ブレンドもやるだけやると、だいたい全部にたような味になってしまい、徐々にあきられてきた事に気がつき、メーカーもだいぶ苦しくなった。しかし、そこに都合良く健康ブームがやってきたので、次に注目されたのが「成分」である。カテキンはもちろん、各種ビタミン・ミネラル、フラボノイドに乳酸菌と、とにかく味が変わらずに添加できるものはみんな添加する勢いで「成分」がお茶に入り込んでいった。ついに数年後には「カルシウム・ウコン・アガリクスの入った、糖尿病によく効く、コレステロールも下げる、厚生労働省指定健康食品のお茶」みたいな、どの部分が本来の成分なのか識別不可能な商品が出るに至った。

ことここに至って、消費者も舌が肥えてきて、どうもこの手の商品の売り上げが落ちてきたらしい。少し前から新たなトレンドがお茶業界に進出している。
お茶の「ブランド化」である。
そもそもよほど舌に自信がある人でも、お茶を缶に突っ込んで数週間ほっといたあと飲み比べて、違いが分かる人などほとんどいないと思うが、にも関わらず、産地を厳選し、生産者を特定し、ついには老舗の御茶屋さんの名前まで借りたブランドものが棚を飾り始める。
これらのお茶は、今までの「おーい、お茶」に代表されるぞんざいな名前とは一線を画した、おしゃれな名前が大きな特徴である。大変いいアイディアだが、問題はそれ以外にさしたる特徴が出せなかったことだろう(何度も言うが、とにかくお茶なのだから)。最初の一回はみんな期待して飲んでくれるものの、飲み終わったあとの99%の人の感想はこうである。
「っていうか、お茶じゃん。」

いや、だからお茶なんだよ、と泣きそうになりながら言っている商品開発会議の様子が想像に難くないが、彼らはそんな感想にもめげず、ついに昨年、究極のアイディアを紡ぎ出す。

開発マン1 「味を変えられないならさ、いっそパッケージ変えるってのはどう?」
開発マン2 「そんなの毎月やってるよ!」
開発マン1 「いや、そうじゃなくてさ。形を変えるんだよ、ペットボトルの。」

この話し合いの結果がどうなったかというと、これは言うまでもないだろう。コンビニのお茶のペットボトルコーナーに行ってみれば、広辞苑を引いても形容する言葉が見つからない奇天烈な形の入れ物がいっぱい並んでいるはずだ。
もう、こうなってくると、あきれるとか笑えるとかを通り越して、今ではぼくはお茶業界の次の動向が楽しみでしょうがない。苦境に立たされたアサヒあたりが苦し紛れにお茶を紫色に着色して「カラフル茶」とかを出してくるのではないかとひそかに期待している。

とにかく、かくして特徴を出すのが難しい商品になんとか独自性を出そうと、コンビニの陳列棚をめぐるお茶開発戦争は今日も熾烈を極めていく。お茶開発マンたちの飽くなき努力には頭が下がる思いである。——まあ、それでもお茶業界はまだいいのかもしれない。ミネルウォーター担当の商品開発部など、いったいなんと同情の声をかけていいのかさえ、正直分からない。

投稿者 向山貴彦 : 2005年04月08日 16:00