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2005年04月06日

まさにアポカリプス

昨日、すごいものを見ちゃいました。
「バイオハザード2:アポカリプス」

ご存知、全ゲーム機制覇の超有名ゾンビ皆殺しゲーム「バイオハザード」の映画化第二弾です。
もちろんこれに先駆けること数年、最初の「バイオハザード」もぼく、恥ずかしいことに映画館で観ています。しかも、ほかに観るものがなかったから観たのではなく、同時にハリーポッターをやっていましたが、迷うことなくまっすぐにバイオハザードに入っていきました。

どんな内容のシリーズなのかといえば、要は「ゾンビ映画」です。ゾンビだらけのところに人間数人が取り残され、そこから生きて脱出するために過剰な暴力と、不必要な残虐描写が炸裂しまくるという、よくあるパターンの大変愉快な映画です。ほかのゾンビ映画との唯一の違いは主人公が逃げまどうどころか、迫り来るゾンビに三角蹴りを入れたりする、脚線美の優れた美女だということぐらいです。
(知性ある女性の方のほとんどはこのあらすじを読んで「誰がこんな映画観るんだ」と考えている頃だと思いますが、ほとんどの男性はもうこの行を読んでいません。今、近くのビデオ屋でバイオハザードを借りている最中です。)

まあ、確かに前作もバカ映画です。最後の敵が狂ったコンピュータだというのですから、まあ、そんなに期待しない方が賢明な映画であるのは確かです。公平な目で採点すれば、せいぜい10点満点で6点がいいところの作品だと思いますが、ぼくはたまに10点満点で6点がいいところの、ヒロインがゾンビに三角蹴りをかます映画が無性に観たくなる時があるので、昨日がそういう日でした。

なので、ちょうどバイオハザード2のDVDも準新作に落ちて、一週間レンタルが可能になったようだし、いい借り時かと思って借りてきました。傍らで用事をすませながら、脳の半分だけで観るのにちょうどいい映画というのも、ちゃんとこうして需要があることが分かります。

再生してみると、さっそくのっけからかましてくれますバイオハザード2。
10分以上ずっとコマーシャル。
途中で自分が何を観ているのか忘れるほど映画の予告編を見せられるのですが、まあ、「バイオハザード2」に限って、こういうのもある種のギャグとして許されてもいいことを、製作者側もよく分かっているのでしょう。仕方ないので、面白くもないのに、なんちゃーなしに全部観ました。
結果的にこの予告編がDVDで一番面白い部分だったかもしれません。

やっと本編開始から十分。正直ぼくはバカ映画というのがけっこう好きで、ダイハードではレニーハーリン(バカ映画界のスピルバーグ)が監督したパート2が一番好きというような不届きな人間です。マルコムXよりもXメンの方が断然好きだし、がんばればタイタニックはおろか、ジュラシックパークでも泣くことができるやつです。稲村ジェーンを公開初日に見に行ってしまいましたし(これはさすがに後悔しています)、去年はどうなるか知っていながらも「デビルマン」を喜んで観に行った男です。そのぼくが映画が始まって十分——本気で言葉を失ってしまいました。

とても薬の影響なしで書かれた脚本だとは思えません。
(以下、映画のネタバレがありますが、この映画そのものが巨大なネタみたいなものなので、あまり気にならないと思います。)

映画が始まってまもなく、主要登場人物数人が教会の中にゾンビと共に閉じこめられ、早くも大ピンチを迎えます。そこへ我らが主人公の三角蹴りヒロイン・アリスが間一髪救助に飛び込んでくるのですが、その飛び込み方がバイクにまたがって、ステンドグラスの壁を突き破って入ってくるという大変派手なものです。
この段階でも、もちろんつっこみどころは山ほどあります。「直前のシーンにバイクなんか乗ってなかったじゃないか」という根本的な疑問も含めて、いくつかの意味不明な矛盾があるのですが、それは次の巨大な疑問から比べると、どうっちゅーこともないようなものばかりです。

いったいアリスはなぜいきなりバイクに飛び乗って、近くの教会のステンドグラスに飛び込みたくなったのでしょう? 見ず知らずの他人が数人、町の中のある特定の建物の中で襲われていることをなぜ分かったのでしょう? それともアリスは日常的に教会のステンドグラスにバイクで突っ込む趣味があったのでしょうか?——これがぼくには大変気になって仕方がありません。

……分かりました。
じゃあ、仮にゾンビに襲われている声が外から聞こえたのだとしましょう。(もちろんこの時点で彼らのいる町はゾンビに征服されているので、きっとあっちこっちから悲鳴が聞こえていると思いますが、それは気にしないことにします。)確かにそれなら何もかも解決します。誰だって廃墟になった町からなんとか我が身ひとつで脱出しようという時に、傍らの教会の中から聞いたこともない人(下手したらすでにゾンビ)の悲鳴が聞こえたら、真っ先に乗っているバイクごとステンドグラスを突き破って侵入することでしょう。いいえ、ドアを蹴破ったり、窓の鍵を壊したりはしません。即バイクからステンドグラスでしょう。間違いありません。絶対です。

しかし、問題はそれだけでありません。
教会の中に飛び込んだアリスを迎え撃つのは数体のゾンビ犬。この時アリスは都合良く手に入れた重火器を何丁も体に下げています。しかも、あとで分かることですが、彼女、素手でもゾンビの首を軽くひねってしまえるような超人的な能力の持ち主です。そのアリスが最初に向かってきた犬に対してどうするか。

重火器で粉々に撃つのか? 鉄拳をくらわして叩きのめすのか?

いいえ。アリスは廃墟の町をおそらく唯一移動できそうな手段である、虎の子のバイクを犬にぶつけて、引火させ、犬はおろか、建物の何パーセントかを吹き飛ばすのです。外にはゾンビがいっぱいいることを考えると、壁はできるだけ残しておいた方がいいような気もしますが、我らがアリスはそんな甘っちょろい女ではありません。爆発の時にそばに人がいたら死ぬんではないかというような疑問も脳裏をかすめることなく、バイク爆弾を力いっぱい放ちます、しかも、そのあと襲ってきた別の犬は簡単に銃で撃ち殺します。どうやら頭にさえ当たれば銃弾一発でも殺せる犬だったようです。——アリス君、ちょっと失敗。

この直後、アリスに向かってもう一人のヒロインが「おまえ、いったい何者なんだ!?」と叫びたくなる理由がよく分かります。しかもアリス、ゾンビ犬を殺し終わったあとに西部劇よろしく、二丁拳銃をくるくる回してホルスターに戻します。アメリカ人はおおらかなので、こういう状況でも素直にアリスを信じたりできるようですが、もしぼくが彼らの立場なら、ゾンビよりもこのいきなり飛び込んできたバイクを爆発させる女の方がはるかに怖いと思うのですが。

映画が始まって十五分あまりでこれだけの疑問点がすでに浮かんでくるわけですが、残りの一時間十五分も目を疑う展開のオンパレードです。あまりにも多すぎるので、代表的なものだけをいくつかあげておきます。

まずはエキストラの数が足りなかったのか、よーく観ていると、たまに何回も出てきて、何回も殺されているゾンビたち——彼らは基本的に頭を打ち抜けば死ぬことを、全登場人物、映画冒頭ですでに分かっています。ところが最後に出てくる最強ゾンビ、彼はなぜか体に防具をつけているのに、頭だけ丸出しです。まるで主人公たちの知性を試すかのように、「ほらほら、ここを打ってごらんよ」とばかりに頭を向けて近づいてくるのに、どういうわけか、人間側は全員胴体を撃っては「弾が跳ね返る!」と驚く始末です。どうやらアリス君は力はめっぽう強いようですが、おつむが少々弱いようで……。

すごいのはゾンビ菌に汚染された町の閉鎖に関するくだりです。この事件の原因である巨大企業「アンブレラ社」はゾンビ菌を外に広めないため、町をあわてて壁で閉じこめ、その中に核爆弾を撃ち込んで何もかもを「消毒」する作戦をとります。大変いいアイディアだと思うのですが、いったい町を囲む壁は普段、町の住人にはなんのためのものだと説明していたのかが不思議でなりません。アメリカ人はおおらかなので、そんなことを気にしないのかも知れませんが、ぼくはもし自分の住んでいる町が高い壁でぐるっと一周囲まれていて、明らかに見張り塔付きの巨大なゲートでしか出入りできない作りになっていたら、相当気になると思います。しかも、その中心にある工場がバイオ技術の研究プラントだったら、尚更です。

しかも、この核爆弾による町ひとつを木っ端微塵に吹き飛ばす出来事を、巨大企業は見事に世間から隠蔽してしまいます。代わりに原子力発電所の暴走事故がでっちあげられ、隠れ蓑にされるのですが、不思議と世界中であまり疑問は起きなかったようです。映画冒頭のシーンで「死者が町を歩く!」というでっかい写真入りの新聞の一面記事が確か落ちていたように思うのですが、そんな珍しい事件もこういう御時世だから、たいしてインパクトがなかったのかもしれません。
「なんだ。死人が歩いているだけか。それよりも原子力発電所がどうしたって? えっ、死人が歩いていたのと同じ町で事故? たまたまだろう。どっちもよくあることだし。」

と、このようなシナリオの元で、映画はすすんでいきます。この見事なシナリオと共に、敵を奇襲するために主人公が高層ビルの側面を駆け下りてくるという想像を絶する演出を思いつく監督の手腕によって、バイオハザード2は比類なき作品に仕上がっています。(あるいはぼくが間違っていて、これは本当は映画ではなく、中学生男子に一億円の予算で映画を撮らせたらどんなものができるのかを調べる科学的な実験なのかも知れません。)

ぼくはエッセイを一本書くこともできたし、ここ数年の映画で「デビルマン」に続いて、二番目に笑うこともできたので、大変有意義な時間を過ごさせてもらったのですが、もしどうしてもどぶに捨てたいお金があるか、おおらかな気持ちになりたくなったら、ぜひご家庭で「バイオハザード2:アポカリプス」をお楽しみ下さい。

最後にこの感想文を締めるにあたって、「バイオハザード2」が10点満点で何点か書きたいところなのですが、小数点以下の数字の表記の仕方を忘れてしまったので、残念ながらできそうにありません。ご容赦下さい。


【本日の教訓】
この映画をもし「自分が観た歴代ベスト10映画」のひとつに選んでいる男性にデートに誘われたら、かなり慎重にお付き合いを考慮したほうがいいかもしれません。

投稿者 向山貴彦 : 2005年04月06日 22:51