【あらすじ】
かつての名門出版社・大衆出版社は倒産の危機に瀕していた。まともな取材費も原稿料も出ない中、最後の新人社員・浅川恵子は中学時代の同級生で大ヒット作「窓ガラスの向こう側」を出版後に忽然と姿を消した作家、小峰操を探すが……

【解説】
 十代の最後で書いた初めての「普通の小説」――当時はまだそんなものが本当にあると信じていた。
 マンガのような内容の小説ばかり書いていたぼくはそのことにコンプレックスを感じていたのか、中学校卒業後、「普通の小説」が書けることを証明しようとした。せいいっぱい背伸びをして四年の歳月の間、必死に「普通の小説」を書こうとしたぼくが最終的にたどり着いた結論は、そんなものがないということだった。結果的に当たり前のように「地軸の傾き」は大失敗作となった。四年も書けてそれを書いてしまった当時のぼくはずいぶんと落ち込んだものだったが 、今にして振り返ってみると、この小説はいろいろな意味で最高の勉強になったと思う。そして、何よりも作品を「仕上げる」ことこそがもっとも大切で困難なのだということを「地軸」から教わった。
 今、読み返すと恥ずかしくてたまらない作品だが、自分が当時考えていたことが鮮明によみがえってきて、実におもしろい。特にヒロイン役の恵子はそれまでぼくが描いていた「理想の女性」から初めて「現実の女性」へと視点が変わり始める最初に一歩となったキャラクターだった。 ぼくにとって、恵子を描くというのは自分が子供時代に信じていた「理想の世界」を捨て、現実をあるがままに描こうとするための通過儀礼のようなものだったように思える。
 お世辞にもうまいとは言えない文章、稚拙なストーリー展開、うすっぺらなキャラクター――誠にお見苦しい作品ではあるが、このような機会でもなければ日の目を見せてやれないので、敢えて恥を忍んで少しだけ公開することにした。それがたとえ出来の悪い作品であっても、ぼくにとってはある時期、総てを賭けたかけがえのない作品のひとつには違いないのだから。
 よければ少し覗いていってみて下さい。