2000/03/25 【朝の出来事】
 ここのところ日に日にショッキングな風景を見ることが多い。始めは「日本も変わったなあ」ぐらいに思っていたのだが、最近ではかなり痛烈な危機感を感じ始めている。
 昨日、朝食の材料がなかったので、朝からスーパーに買い出しに行くと、スーパーの開店時間の五分ほど前に着いてしまった。今日は特売日か何かのようで、スーパーの前にはすでに人だかりができていた。仕方なくそのひとごみから少し離れたところに立ってぼんやり待っていると、開店一分ぐらい前になって、道の向こう側から母親とその五歳ぐらいの娘の二人がこっちに向かって走ってきた。母親は明らかにスーパーに向かって走っているようで、ほぼ全力疾走。後ろから子供が必死についてきているという状況だ。「危ないなあ」と思っていると、母親はそのまま一心不乱に車が行き交う道路へ飛び出し、一気にスーパーの玄関へと走っていく。出遅れた子供は車に阻まれて、あわてて道の向こう側で立ち止まり、気付かずに走り去っていく母親を必死に呼んでいたが、母親はまるで介さず、すでにスーパーの中に消えていた。子供が今にも飛び出しそうでヒヤヒヤしていたが、泣き出すものとばかり思っていたその子供は、しばらくすると、ちゃんと横断歩道のあるところまで行って青信号で渡っていた。子供はやがてぼくの前を通り過ぎて、スーパーに入っていった。この間、けっきょく、母親が戻ってくることはなかった。



2000/03/26 【悲しい緊張感】
 本日原稿の受け渡しのために新宿まで出てとんぼ返りでスタジオに戻るため、中央線の特別快速に乗った時――なにやら周囲の乗客の間に言い知れぬ緊張感がある気がしてならなかった。比較的車内は込んでいるというのに、ほとんど話し声はなく、なんとなく空気が張りつめている。はじめはぼくの気のせいかと思っていたが、近くの女子高生三人組の会話ですぐにその得体の知れない空気の意味が分かった。「やっぱりよそうよ、一番前は。」「だって、夕方の特快だよ、絶対やばいって。」そうなのである。この時間、中央線の特別快速で立川行きのものはとてもやばいのだ。このところ数日に一度、誰かが踏切から自殺しているのである。女子高生達がとなりの車両へ移っていく中、ほかの乗客達は無言で咳払いをしたり、落ち着かない様子でキョロキョロしていた。となりに座っているOL風の女性はさっきから意味もなく携帯の電源を入れたり消したりしている。十分ぐらい駅に止まることなく疾走し続ける中野、三鷹間になると、さすがにぼくも緊張して、ブレーキがかかるごとに心臓が鼓動をとばしていた。この状況が異常事態だと思うのはぼくだけだろうか。



2000/03/27 【交差点で挨拶を】
 ぼくが大学を長期休学している間、ほかのみんなは着々と学年を進め、卒業していきました。ついに今年、ぼくやねこぞうが直接親交のあった最後の世代が大学を去っていきます。ひとつの時代が終わり、たくさん知り合いのいた大学のキャンパスは見知らぬ人ばかりの行き交う場所になってしまいました。普段こういうセンチメンタリズムにうといねこぞうまでが、自分のページにらしからぬ卒業生へのお祝いの言葉を載せている気持ちがよく分かります。人は出会い、別れていく。「生者必滅会者定離」という言葉がありますが、その通りで、命ある物は必ず消える時が来るし、出会った人とは必ず別れる時が来ます。今、この文章を読んでいる人たちも、今からわずか百年後には誰も残っていません。――それどころか、今生きているほとんどすべての人がいなくなっているはずです。そして、新しい見知らぬ人たちが、同じように世界を動かしているはずです。悲しいことのようですが、だからこそこの短い一瞬の中で出会えたことが奇跡なのだと思います。斜に構えることなく、素直に周りの人たちと出会えたことを喜びたいとぼくは思います。気にしていないふりをするには、ぼくらにはあまりにも時間がなさすぎる。
 今年、様々なところを卒業し、新世界へ巣立っていくすべての人たちへ――おめでとう。
 今日、ここで道が交わったことが奇跡です。



2000/03/28 【匂い屋】
 近頃世間では「癒し系」がブームなようですが、わがスタジオでも「癒し系」が必要を迫られて流行中です。ぼくが愛用しているのは「インセンスコーン」と呼ばれるお香の一種で、こんな感じの物です。

 三角形のお香に火をつけると煙が部屋に立ちこめて、桜や桃や檜の香りが漂います。なんとなく気分が安らぐ気がして、モニタを見つめっぱなしの昨今、ほとんど四六時中欠かせません。
 そこで、前からやってみたいと思っているお店が「匂い屋」。

 「匂い屋」ではこういったお香、香水、フラグランス、ポプリから脱臭剤まで匂いに関するグッズを集めて香り別に展示したいと思っています。中には「肥溜め」とか「キャンプ場のトイレ」といった、嫌いな人にあげる専門のコーナーもぜひ用意したいと考えていますので、オープンの際にはぜひお立ち寄りを。



2000/04/01 【四月でなくても十分馬鹿】
 つい良心の呵責に堪えられなくなってしまいました。これ以上みなさんをだまし続けることをぼくはできません。今日は本当のことを言ってしまおうと思います。――実はねこぞうは本当にねこなんです。これが彼女の本当の写真です。

 今まで黙っていてすみません。実は雪深いある冬の夜、ぼくが町を歩いていると、おなかをすかせて雪道に埋もれるように倒れている子猫を見つけました。スタジオに連れて帰ってみんなで温かいミルクを飲ませて毛布にくるんでやったところ、しばらくして元気になったのですが、そのあと、スタジオに恩返しをしようと住み着いてしまったのです。前脚の肉球でポツポツキーボードを打って、それでもいっしょうけんめい手伝ってくれているつもりみたいです。こんな大変な事実を今まで隠してしまっていたことを心からお詫び致します。


2000/04/07 【おしゃれ国家陰謀説】
 オヤジの汚名を受ける覚悟で告白するが、最近は男子高校生が毎朝眉を整えていると聞いて、あごが地面付近まで落ちた。脱毛までしている愚か者がいるとも聞く。ちょっと前に男の子がピアスをしているのを見てひっくり返ったばかりだというのに、もうそんなところまで来ていたとは。このペースで行くと、来年辺りはプラスチック整形とかロボトミーとか行う高校生男子が出てくるにちがいない。十代の後半まで櫛も持っていなかったぼくにとってはまるでおとぎ話のようだ。(よく考えたら今も持っていない)
 確かに東京の町を歩いていると、最近はみんなおしゃれだ。よれたシャツとしなびたジーパンを着て歩いているのなど、ぼくぐらいのものだろう。きっとぼくの知らないところで「向山貴彦以外の人間はみんなおしゃれになる政府計画案」とかいうパンフレットが配布されているのだと確信し始めている今日この頃のぼくである。


2000/04/11 【ねこつうの読み過ぎ】
 ルージャン×サンプ本の話題でつい思い出した頭の悪い話がある。まだぼくがサッカーに夢中の純情な小学生だった頃、当時当然のようにみんなが読んでいた「キャプテン翼」をぼくも毎週ジャンプで読んでいた。確か、単行本も最初の数冊持っていた記憶がある。ある日、友達に誘われてデパートの片隅で開催されていたコミケに遊びに行くと、「キャプつば本あります」と書かれたブースがあって、そこだけは人だかりができていた。混みすぎてちゃんと中身を見ることができなかったので、とりあえず一冊買って帰って、家でゆっくりと開いてみた。すると、それは確かにキャプテン翼の本だったのだが、いきなり最初から日向小次郎が翼にタイガーショットを決めていた。まだそれがいったい何をしているのかもよく分からなかった当時のぼくだったが、それ以来、キャプテン翼の単行本は買わなくなったことだけは確かである。


2000/04/15 【ビルくんの悪戯】
 ぼくの知り合いのビルくんはすごく性格は悪いのですが、自宅の駐車場が足りなくなったのでボリビアを買おうかと思っているような大金持ちです。ビルくんはコンピューター業界を独り占めしようと企んでいたのですが、政府に目を付けられて最近すごくいじめられているので、とてもとても不機嫌です。このままでは彼の収入が下がってしまいます。今までは年収でアフガニスタンが三つぐらい買えたのに、今年からは二つしか買えません。そこでビルは得意の弱い者いじめで気を晴らすことにしました。お金がないのでいっしょうけんめいお金のかからないホームページをコツコツ作っている大衆にいやがらせをして遊ぶことにしたのです。Internet Explorerの 最新版のデフォルトのフォントが異常にでかく設定されているのはこのためです。せっかく4.0や4.5に合わせて自分のページをいっしょうけんめいデザインした人たちがブラウザを立ち上げたとたんに悲鳴をあげるのを聞くのだけが今のビルくんの楽しみです。くやしいのでまたネスケに乗り換えようかと考えています。