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一人じゃ足りない

6月 10th, 2004 — 4:22am

今日発表された「女性一人当たりの出生率」がついに1.3人を切った。これはよく考えると、とても怖い話だと思う。地球温暖化とか、核兵器とか、鳥インフルエンザとか、怖い話がいっぱいある世の中だけど、実はこの数字が一番怖いと思う。
何しろ、子供というのは決して一人では作れない。一人の子供が生まれてくるのに、二人の大人が必要なのだ。
2人、である。
もう一度、この出生率の数字を見てみてほしい。
1.3人。
二人がかりで、やっと子供一人しか生まれない計算になる。これはどういうことかというと、誰がどう考えてもどんどん人が減っていくということだ。極論すれば、我々は限りなくゼロ――つまり全滅に向かっているともいえる。
でも、本当に怖いのはそこではないと思う。
本当に怖いのは、今が戦争や飢饉のような状態だから人口が減っているのではなく、裕福で安全であるにも拘わらず、自ら増えないことを我々が望んでいるということだ。
生物は本来、子孫を増やし、種を絶やさないことを望むようにプログラムされている。にも関わらず、ぼくらは自ら「増えない」ことを選んでいる。
ぼくを含めて、ぼくの周りのほとんどの人が三十代になっても結婚していない。男も女もである。みんなふつうの人で、結婚するチャンスもあると思うが、でもしていない。だから当然子供もいない。
理由は様々である。もっと仕事がしたい。一人でいたい。合う相手がいない。束縛されるのがいやだ。勉強がしたい……などなど。でも、本当はもしそうじゃなかったらどうしよう、とぼくは最近心配になっている。本当はもし自分の意思でそうしているのではなくて、もっと本能的な何かに操られているのだとしたら?
環境を汚し回ったあげく、自然を破壊して、戦争ばかり繰り返している人類に、遺伝子が愛想をつかしたのだとしたら? これは何もSFの話ではない。遺伝子にはそういう自滅スイッチのようなものがあることは昔から知られている。もし、それが実はもう発動しているのだとしたら……?
かつて昭和の頃、ノストラダムスの大予言で地球全滅が話題になったことがあった。みんな、嘘っぱちだと思いながらも、内心はだいぶ怯えたものだった。でも、今同じような話が出ても、なぜかあの時のようにみんな怖がらないのではないかという気がする。「まあ、しょうがない」と思ってしまうのではないだろうか。かく言うぼく自身も、そんな一人である。
きれやすい人が増え、子供を虐待する親が増え、意味もなく人を殺す事件が多発する。もしかしたら、人類が全滅する時は、かつてのスペクタクル映画で描かれたように、派手にドカーンと一日で全滅したりするのではなく、戦争も、疫病も、隕石落下もなく、ただ自らの意思によって内輪からゆるやかに全滅していくのかも知れない。
出生率を見ながらそんな怖いことを考えて、まあいいかと思っている自分に、また怖くなった。

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