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マジやばいって

8月 10th, 2003 — 3:56am

どの時代にもその時代の誉め言葉というのがあるらしい。今の主流は「やばい」だ。「それ、マジやばくね?」というように使う。
ぼくらの時代は「渋い」だった。とにかく何を見ても「しぶー」と言って感心してみせた。
ここ十年ぐらい女の子に愛用されているのが「かわいい」だ。これはもはや定番化しつつある。誉める対象がアフリカから買ってきたマサイ族の戦士の人形でも「かわいー」で通すのが基本だ。
逆に男の子の「かっこいい」というのも普遍的な誉め言葉で、こちらは対象がキティちゃんの人形でも「キティかっこええ」と使ったりする。
これらはどれも元の意味はもうほとんど持っていない言葉たちだ。その時代の価値観で「いい」ものを表すために生け贄として捧げられた言葉たちである。
思えばずいぶん昔、ぺちゃんこにつぶした学生鞄に「めっちゃ渋いな、それ」と言って感動していた自分がいる。
どこがどう渋かったのかさっぱり思い出せないが、とにかくあの時の価値観では確かにあの鞄は「渋かった」のだ。その「渋さ」は明らかに今これを打ちながら飲んでいる緑茶のそれとは違うものだが、でも、その時はその言葉でしか表せない何かがぺちゃんこの鞄にはあったのだ。
得体の知れない風体の五人組のバンドのポスターを指さして興奮気味に「こいつら超やばくね?」と騒いでいる若者を見ながら、そんなことを考えてみた。ぼくにはもはやなぜラッパズボンをはいた禿頭の男や、アフリカ系アメリカ人の日本版のような人たちがそれほど渋いのか分からなくなってしまったが、きっと彼らにはさぞかし「やばい」ものなのだろう。

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