2月2010

ギターを持ったなまけもん

なまけもん16

tt-webから無断転載中!
アメリカ出発を前に最近覚えたギターをかきならすなまけもんです。
(この作品はフィクションであり、現実のたかしまてつを、たかしまてつをのギター、そして、たかしまてつをの生活とはなんの関係もありません。少なくとも本人はそう言い張っています。)

TwitterでつぶやくTwitterでつぶやく

『空間への侵入』 宮山香里イタリア展レポート

二人展

先日お知らせしましたイタリアで開催中の「宮山香里二人展」の会場から、宮山本人撮影による写真が届いています。公式ブログの2/16のページへどうぞ。

写真は展示の一部より「Immagini Erranti さすらいの像」(宮山香里作)
古い民家の風景に奇妙に溶け込んだ椅子とガラスは、良く見ると二次元の作品で、空気の流れに心地よく揺れている。

TwitterでつぶやくTwitterでつぶやく

本日のワンパラ(10/02/15)

MOBSバナー
「もうひとつのスタンダード」

 ずっと三十年近く頭にひっかかっていたことがあった。
 アイスクリームのバニラ。
 どんなところでも必ずある味、バニラ。アイスクリーム界の標準。「プレーン」と限りなく同義語のバニラ。「アイスクリーム」の横に特にフレーバーの表記がなければ、自動的にバニラだと解釈されてしまうほどメジャーな味――それがバニラ。
 実際にはバニラビーンズからとれたれっきとした香料で、たくさん入れると食べられないぐらいきつい匂いの香料なのに、ほとんど無色だったせいか、しっかりアイスクリーム界の「プレーン」の位置に収まっている味――それがバニラ。
 実際、たまにアイスクリームには「ミルク」という味が存在する。これこそが明らかにアイスクリームの「プレーン」であるべきが、しっかりその座を奪ってしまったバニラ。

 このバニラが、実は長い間、ぼくはぴんとこなかった。
 幼い頃、両親の仕事の関係で一時期アメリカに住んでいた頃、ぼくはそれはもう尋常じゃないほどアイスクリームを食べていた。2ディップ、3ディップはあたりまえの世界で、下手すると朝ご飯と一緒にアイスクリームを食べていた。当時のアメリカはまだ「ヘルスコンシャスくそくらえ」の時代で、いかに自分が不健康かというのをアピールするためだけに、人工着色料をホットドッグに振りかけるのがクールな時代だったので、そんなことにあまり疑問も感じなかった。

 そして、この悪癖を助長してくれたのが、友達だったケーヒーさん一家である。ケーヒーさん一家はとても素敵な人たちなのだが、とにかく良く食べる。日本人の「良く食べる」とは違う次元に「良く食べる」。何しろケーヒーさん一家六人は、全員の体重を合わせると1トンを超える。しかも、その六人のうち二人は当時年頃の娘さんだった。
 ケーヒーさんの家に食事に招かれると、それはもうすごいことになる。一人につき、一匹チキンが出てくる。テーブルの中央に漏られたマッシュポテトの山で向かい側に座っている人の顔が見えない。(しかし、食事が進むと急速に見えるようになる。)そして、デザートになると台所の片隅にある巨大な専用フリーザーに連れて行かれ、そこにびっしりと何十種類も詰まったアイスクリームの山から好きなフレーバーを選ばせてもらえる。例えばチョコレートを選んだとしよう。子供なら両手でやっと持てるような巨大な容器を渡される。当然それをみんなで分けるのだろうと思いきや、大きなスプーンを渡されて「はい、次の人選んで」と言われる。
 ケーヒーさん本人に至っては、その上にチョコシロップやナッツ一袋とかををかけて食べていた。しかも、添えられた飲み物はコーラの1リットルボトル。カロリーは天文学的な数字に達していたことだろう。ケーヒーさん一家の一番の悩みはトイレの便座が定期的に割れてしまうことで、一番の自慢は風呂の水が風呂桶の三割ですむことだった。

 とにかくそんな無茶なケーヒーさん一家だったが、いつも出てくる食事はやたらとおいしかった。自家製の燻製小屋が庭にあって、そこで自分で挽いたミンチ肉のパティーを黄金色になるまで一昼夜いぶし、それに庭でとれた野菜を挟んだハンバーガーは絶品だった。それにケーヒーさん特製のフライドポテトがつく。彼らは一人でじゃがいも六個ぐらいのポテトを食べるので、いちいち細く切っていると作るのも食べるのも面動らしく、じゃがいもは丸のまま揚げていた。片手で持てないフライドポテトだったが、それにチーズとケチャップを狂ったようにかけてあるのが最高だった。
 何よりも忘れられないのがアイスクリームだった。とにかくやたらとおいしいアイスクリームで、ぼくの記憶が正しければ、それはケーヒーさんがひいきにしている小さな町のアイスクリーム屋で、真っ白の容器にはただ「ミント」とか「チョコ」とか、ペンで走り書きだけがしてあった。
 問題はここからなのだが、ぼくは当時、いつもケーヒーさんの家ではバニラを選んでいた。というのも、とんでもない量を食べることになるので、ほかの味だと途中で飽きてしまうからである。食後はみんなで居間の暖炉の前に集まって、全員アイスクリームのバケツを手に抱え、談笑しながらもくもくとアイスを食べることになる。最初アイスがカチカチなこともあって、食べ終わるのに一時間はかかるので、最後の方は食べるというよりもむしろ飲む感じになる。
 このバニラアイスクリーム、今でもはっきり味を覚えているのだが、とてもとてもうまかった。何かほかのアイスとは次元の違ううまさだった。

 ところが日本に帰ってきて以来、何百回とバニラアイスをあらゆるところで食べて来たのに、未だにあの時のアイスの味と似ていた試しすらない。雑誌などで紹介している有名店で期待してバニラアイスを注文しても、いつも何かが違う。やはり圧倒的にケーヒーさんのアイスの方がうまいのだ。
 ある時期から、それはもうたぶん自分が思い出と一緒に美化した味で、本当はすべて錯覚なのではないかと思っていた。あれはぼくの中だけにある、幻の味だったのではないかと。

 そうして、何十年が過ぎ、ぼくはほとんど完全にそのアイスのことを忘れた。
 時は過ぎて、2009年、夏。「絶叫仮面」の追い込みで疲れたねこぞうがアイスを食べたがっていたので、近所の西友までハーゲンダッツのミニカップを買いに出た。「味はなんでもいい、おいしそうなやつ」という指示を受けていたので、適当にフリーザーの中を物色して手当たり次第に三つほどカップを買って帰ってきた。
 ぼくは遠慮していたのだが、ねこぞうから「買ってきたうちのひとつがめちゃくちゃおいしいから食べてみな」と言われて、なにげなく一口もらって食べた。
 その瞬間、ものすごい衝撃に襲われた。幻だと思っていた味が、ケーヒーさんのアイスの味が、口の中に確かに広がった。あの独特のバニラの味だった。そして、その時、初めて思い出した。そうだ。たしかあのバニラには小さな茶色の粒々が入っていた。
 思わずねこぞうからカップを取り上げて、もう何口か食べてみたが、間違いなかった。これこそが三十年探していた、ケーヒーさんのアイスクリームだった。
 慌ててカップのラベルを見てみると、そこには「バニラ」ではなく「メープルクッキー」と書かれていた。メープル。そうだ。そういえば、ケーヒーさんはその白いアイスを「バニラ」とは読んでいなかった。ただ、バニラがなく、唯一あった「プレーン」なアイスがそれだったから、ぼくは自動的にそれがバニラだと思い込んでいた。でも、記憶の底からゆっくり、その容器に書いてあった本当の名前が頭に浮かんできた。
 メープル。
 そうだ。あれはメープルのアイスクリームだったのだ。
 バニラよりも香り豊かで、それでいてさっぱりとし、後味が絶妙なメープル。ぼくの住んでいたアメリカの地方がメープルシロップを好む文化だということも同時に思い出した。あの田舎のアイスクリームショップではきっと「プレーン」はバニラではなく、メープルだったのだ。

 なかなかコンビニなどでは見かけないのだが、ハーゲンダッツのアイスクリームを大量に置いているスーパーを見つけたら、ぜひ味見してほしい。バニラに隠れて、歴史の闇に葬られそうになっているもうひとつのアイスクリームのスタンダード、「メープル」を。


TwitterでつぶやくTwitterでつぶやく

たかさん、ニューヨークへ

agora展

たかさんがニューヨークのAgoraギャラリーのグループ展に参加します!
開催期間は2010年2/26(火)〜3/19(金)まで。
ギャラリーの営業時間はA.M.11:00〜P.M.18:00。日曜と月曜は休館です。

現地時間2010年3月4日に開催されるレセプション・パーティーにはたかさん本人も出席するそうです。
「イラストレーター・たかしまてつを」とはまた違う「画家・たかしまてつを」の魅力が存分に溢れる作品群が展示されています。
遠く離れたニューヨークでの開催で、見に行くことができないと悲しんでいるみなさま。こちらのウェブページで作品を見ることができますので、ぜひ!

リンク先のプロフィールの全文訳は以下(意訳):
たかしまてつをは自らの内側より溢れる個性的な創造力に従って、線を主体とした作品を多く描いている。コンピュータグラフィックによって描かれるたかしまの絵画作品は時として抽象的な表現と、シンプルなスタイルの双方を使い分け、デジタルアートでは見かけることの少ない、極めて強い主張を持ったものとなっている。彼が用いるシンプルな形や自由な曲線は子供が描いたかのような純真なエッセンスを作品に与え、創造力をかき立てる作品群をさらに魅力的にしてきた。たかしまが作品中で扱うテーマは「人間」、「ジャングルの動物たち」、あるいは「宇宙空間」とまで多岐に亘っているが、その普遍的なテーマは絶えず「線」が有するユニークな表現力を追求することにある。「線」は現実世界の物体を表現するために「手」を導くものであるが、それ以上に作品の中では「線」そのものがどのようにして描かれるかに強い重きが置かれている。

たかしまてつをは山梨大学の工学部を卒業後、15年間、フリーランスのイラストレーターとして活躍している。日本在住。過去にヨーロッパやアジアで展示を行っている。

Agora Gallery
530 West 25th Street, Chelsea New York
Tel 212-226-4151 / Fax 212-966-4380
Agora Gallery / Art Mine / ARTisSpectrum

また、同ギャラリーでは作品の販売をオンラインでも行っているようです。
Art-mine(販売サイトのたかしまてつをページ)


TwitterでつぶやくTwitterでつぶやく

宮山香里、イタリア二人展

イタリア二人展

2010年2月7日よりシチリアのカターニャで宮山香里が参加する二人展が開催されています。遠く離れた国での展示ですが、機会のある方はぜひ訪れてみてください。とてもユニークな会場で行われるユニークな美術展となっています。

展示会場は「民家」の博物館。エトナ山麓の18世紀末に建てられた農家を、後に市が買い取り修繕したもので、寄贈された家具や日用品、仕事道具等、日常生活そのものを文化として保存している所です。
その家空間に侵入し、二人のアーティストの作品を空間に紛れ込ませて、不思議な空間とのコラボレーションが展開されます。

Invasioni di Spazio -effetti desiderati-
2月7日 〜 2月28日
オープニング 2月7日 17:00
Casa Museo (イタリア/カターニャ)
ArtForumリンク

TwitterでつぶやくTwitterでつぶやく
« 前の記事