ポーラ美術館の開館10周年展イベントとして、2013年7月初頭の一週間、七夕にちなんだワークショップの企画依頼がありました。そこで、過去/現在/未来を繋げ、今後の10年間を見据える節目として「未来へのまなざし」を企画。伝統的な七夕では、短冊に「個人の願い」を記し笹に吊るしますが、今回の企画では、10年後の願いを込めた「窓」の短冊を掲げ「未来の家」として発展させていきます。                              

「未来へのまなざし」をコレクションして1つの家を作り上げる:
私たちの住む日本/地球を「家」と捉え、10 年後 その外から見える景色、もしくは内から見える景色に思いを馳せる契機を作ります。1つの大きな家の枠組みの中に、それぞれの未来への展望を「窓」に託して、吊るし掲げていきます。その集積が、最終的に未来への想いの具現化となります。それは家の外からの視点、もしくは内からの視点かもしれません。窓は「うち」と「そと」をつなぐ境界線。人は、それぞれ自分の所属する場の「うち」と「そと」を使い分けながら、自分の居場所への愛着や結束を深めていきます。

変化し続ける「窓」などのインスタレーションによって、日本人としての「あいだ」
「間」の感覚、「うち」と「そと」を巧みに使い分ける特殊性などをリサーチしてきました。その経験を基盤として今回の「透明な窓を掲げ集積する」ワークショップを考案しました。 震災後、様々な大問題を抱え、明るい未来が描きにくくなっている日本の中で、今こそ個人的な「家」を越えて、自分たちの住む日本/地球という「家」について真剣に考えねばならない時だと実感します。 住み心地のよい10 年後の私たちの「家」、今と10 年後をつなぐ「窓」を掲げた家は、どんな形になるでしょうか。



-展覧会を見にいらしたお客様が気軽に参加できる作業。

窓に見立てたプラスチック透明シート上に
 1:窓から見える景色(内でも外でも可)を
   カッティングシートで貼り描く
 2:今後10 年の展望/願いを文字で書く
 3:展望の窓を「未来の家」に吊るす

私たちが住む日本/地球を1つの「家」と捉え、家から見える景色、家の中に見える景色を映し出した窓を掲げていく。


参加者は、あらかじめ用意されたシールの形状を組み合わせたり、ハサミで好きな形に切り取りながら、自由にイメージを作ります。絵が苦手だったり時間のない方々でも気軽に参加でき、こだわりのある方々にも満足頂ける使用度を目指しました。

今回のワークショップでは、カッティングシートを中川ケミカル(株)さま、プラスチックシートをアクリサンデー(株)さまに協賛を頂きました。

-プロセス (7月1日〜7日の約1週間)
少しずつ窓を増やして、家の内と外をつなげていく。
自然光や美術館ロビー周辺風景と調和しながら、揺らめき変化し続ける家。

-完成 (最終日)
今後の10 年という未来に想いを馳せるような1つの家が完成。
7月中の1ヵ月間展示する。



箱根の自然に包み込まれたポーラ美術館の建築空間。
自然光に反射して輝く色鮮やかなカッティングシートが、
10年後の想いがつまった家の窓にきらめきます。

半年ほど学芸員さんと企画を進めてきましたが、実際に始めてみて、まず驚いたのは、参加者の創意工夫。無料で誰でもその場で参加できるワークショップの場合、できるだけ手間隙をかけずにできる単純な作業が基本となります。中川ケミカル(株)の担当者さんのアドバイスも参考に、単純な色や形、大きさのシールを多数用意し、10分位で誰でも気軽に具体的イメージを描けることを想定しました。実際は、30分以上かけて、ハサミを使って造形表現に工夫をこらし、こだわりのある窓を作って下さったお客様がたくさん!


子供から大人まで、毎日多くのお客様が参加し、10年後の想いを描き記して下さいました。ご家族連れの参加も
多く、最初は消極的だったお父様なども、実は一番時間をかけて こだわりを見せて下さったり、小さな子供が見事な造形を表現したり。10年後の願い…ということで、少し迷いながらも、皆さんそれぞれの想いを込めていました。






ワークショップ最終日の七夕当日には、本当に多くの方々が参加して下さり、急遽 作業テーブルを別室に増設したりと、賑わいを見せていました。




願いを込め、書き記し、吊り下げ集積するという行為は、
七夕短冊や絵馬など日本の伝統でもあります。
光を浸透し色鮮やかに輝くカッティングシートが、
祈りの空間である教会のステンドグラスも想起させます。
「窓」から見える景色は、いわば外へつながる世界の入り口であると同時に、内に籠る雰囲気やパーソナルな時空間の欠片でもあります。「窓」は、その視点によって主体と客体の反転可能性を常に秘めています。未来の社会は、私たち一人一人の想いから具体的に形作られていきます。
2013年7月1日から7日にかけて展覧会の来訪者 老若男女約472名の10年後の願いを掲げた「未来の家」が完成しました。

今回の企画は、1歳から90代までの老若男女500名弱が自由参加し1週間をかけて行われるという、ワークショップとしては貴重な機会となりました。7日間少しずつ窓が増えてゆき、7月7日に完成するという変化のプロセスも楽しむことができ、成果物は1ヵ月間展示されました。